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2026-08-07

カスハラ対応マニュアルと相談窓口の作り方|現場が迷わない体制づくりの実践ポイント

「方針は決めた。次は何をすればいいですか?」
カスハラ対策の第一歩として基本方針を策定された企業様から、よくこのようなご質問をいただきます。

方針を決めることは大切な第一歩です。しかし、方針だけでは現場は動けません。「実際にカスハラが起きたとき、誰が、何を、どうするのか」その具体的な手順が整っていなければ、従業員は一人で判断を迫られ、対応がばらついてしまいます。

そこで重要になるのが、対応マニュアルの整備と相談窓口の設置です。

本記事では、東京都「カスタマーハラスメント対策マニュアル(ひな形)」の内容もふまえ、現場で実際に機能するマニュアルと相談窓口の作り方を実務レベルでお伝えします。

カスハライメージ画像

この記事の目次

  1. なぜマニュアルと相談窓口が必要なのか
     ① 「現場任せ」が引き起こす問題
     ② 義務化された5つの措置との関係
  2. カスタマーハラスメント対策マニュアルに盛り込むべき項目
     ① カスタマーハラスメント対策の目的
     ② カスタマーハラスメントの定義
     ③ カスタマーハラスメントに対する基本方針
     ④ 顧客対応の基本的な考え方
     ⑤ カスタマーハラスメントの判断基準
     ⑥ 組織としての対応手順
     ⑦ 相談窓口と従業員への支援
     ⑧ 再発防止と研修
     ⑨ 企業間取引におけるカスタマーハラスメント
  3. ハラスメント相談の現場から|仕組みが従業員を守る
  4. まとめ|マニュアルと相談窓口は「作って終わり」ではない

1. なぜマニュアルと相談窓口が必要なのか

① 「現場任せ」が引き起こす問題

カスハラへの対応を現場任せにしていると、次のような問題が起きやすくなります。

  • 担当者によって対応がバラバラになる
  • 「どこまで我慢すればいいのか」を従業員が一人で判断しなければならない
  • 上司への報告が遅れ、問題が長期化する
  • 対応した従業員が精神的に疲弊し、離職につながる

カスハラ対策は個人の対応力に頼るものではなく、組織として統一した対応ができる仕組みをつくることが本質です。

② 義務化された5つの措置との関係

厚生労働省の指針では、企業に対して以下の5つの措置を求めています。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談体制の整備(相談窓口の設置に直結します)
  • 事後の迅速かつ適切な対応(対応マニュアルの整備に直結します)
  • 対応の実効性を確保するために必要なカスハラの抑止のための措置
  • プライバシー保護や不利益取扱い禁止といった配慮措置

マニュアルと相談窓口の整備は、この5つの措置を実効性をもって果たすための土台となるものです。

2. カスタマーハラスメント対策マニュアルに盛り込むべき項目

カスタマーハラスメントから従業員を守るためには、現場の従業員だけに対応を任せるのではなく、組織としての統一的な対応方法を定めておくことが重要です。

ここでは、東京都の「カスタマーハラスメント対策マニュアル(ひな形)」をもとに、企業がマニュアルに盛り込むべき主な項目をご紹介します。

① カスタマーハラスメント対策の目的

まず、カスタマーハラスメント対策に取り組む背景や目的、マニュアルの位置づけを記載します。

カスタマーハラスメントは、従業員に精神的・身体的な苦痛を与え、その尊厳や人格を傷つける行為です。従業員が安心して働き、能力を十分に発揮できる就業環境をつくるためにも、組織的な対策が必要です。現場の従業員任せにせず、組織として対応することをマニュアルに明確に記載します。

② カスタマーハラスメントの定義

東京都のひな形では、カスタマーハラスメントを「顧客等から従業員に対して行われる著しい迷惑行為であって、従業員の就業環境を害するもの」と定義しています。あわせて、「顧客等」「従業員」「著しい迷惑行為」「就業環境を害する」の範囲を明確にします。

著しい迷惑行為の例としては、以下のような行為が挙げられています。

  • 暴力行為
  • 暴言、侮辱、誹謗中傷
  • 威嚇、脅迫
  • 人格を否定する発言や差別的な発言
  • 土下座の要求
  • 長時間の拘束
  • 社会通念上相当な範囲を超える対応の強要
  • 合理性を欠く不当・過剰な要求
  • 会社や従業員の信用を毀損する内容や個人情報をSNS等へ投稿する行為
  • セクシュアルハラスメント、SOGIハラスメント、つきまとい行為など

これらはあくまで例示であり、該当する行為がこれだけに限られるものではないことも記載します。

③ カスタマーハラスメントに対する基本方針

マニュアルには、企業としての基本姿勢を示す「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を盛り込みます。

顧客から寄せられる意見や要望には真摯に対応する一方、従業員の尊厳を傷つける著しい迷惑行為に対しては、組織として適切に対応することを明確にします。さらに、カスタマーハラスメントに該当すると判断した場合には、対応の打ち切りやサービス提供の中止を行う場合があること、悪質な場合には警察や弁護士等と連携することも定めます。この基本方針は、社内だけでなく、社外にも周知します。

④ 顧客対応の基本的な考え方

顧客からのクレームのすべてがカスタマーハラスメントに該当するわけではありません。商品やサービスに関する正当な指摘や要望は、業務改善につながる貴重な機会でもあります。そのため、マニュアルには通常のクレームに対する基本的な対応方法も記載します。

具体的には以下のような内容です。

  • 相手の話を傾聴し、共感を伝える
  • 責任関係が明らかでない段階では限定的な謝罪にとどめる
  • 必要に応じて担当者や上位者に対応を代わる
  • 原則として複数人で対応し、対応内容を記録・共有する
  • 必要に応じて会話の録音やSNS投稿のスクリーンショットを保存する

初期対応では、相手の要求内容を明確にし、5W1Hを用いて事実関係を確認します。事実を確認しないまま、要求内容を認める発言をしないことも大切です。

⑤ カスタマーハラスメントの判断基準

カスタマーハラスメントに該当するかどうかは、主に次の3つの視点から検討します。

  • 要求の態様
  • 要求の内容
  • 行為の時間・回数・頻度

暴力や脅迫、侮辱的・差別的・性的な言動、不当な金品や土下座の要求、長時間の拘束、対応できない要求の繰り返しなどが判断の要素となります。ただし、これらは絶対的な基準ではありません。個別の事情を踏まえ、機械的な判断にならないようにすることも重要です。

⑥ 組織としての対応手順

現場で迷惑行為が続いた場合の報告先や、誰がどの段階で対応を引き継ぐのかを明確にします。

一次対応者がカスタマーハラスメントの可能性を感じた場合には、上司へ報告します。上司は状況を確認し、必要に応じて対応を代わり、一次対応者と顧客等を引き離すなどの措置を講じ、安全を確保します。

組織としての回答を伝えても迷惑行為が続く場合には、対応の中止・警告・退去命令へと移行します。暴力や器物破損など、身の危険を感じる場合には、速やかに警察へ通報することも明記します。

緊急時  → 110番
緊急ではないが警察への相談が必要な場合
     → 所轄警察署または警察相談専用電話「#9110」

⑦ 相談窓口と従業員への支援

カスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できる窓口を設け、相談方法・担当者・連絡先などを周知します。

相談者のプライバシーを保護すること、相談したことを理由として不利益な取扱いをしないことも明記します。また、相談者の心身の状態に配慮し、必要に応じて産業医や産業カウンセラー、臨床心理士などの専門家につなぐ体制も整えます。

⑧ 再発防止と研修

事案の発生後は、実際の対応を検証し、マニュアルや研修内容の見直しに活かします。

研修は、経営者や現場監督者を含むすべての従業員を対象として定期的に実施します。基本知識だけでなく、クレーム対応・カスタマーハラスメントへの対応・組織的な対応・従業員へのフォローなどを取り上げます。判断基準や対応手順の説明に加え、ケーススタディやロールプレイングを取り入れることも効果的です。

⑨ 企業間取引におけるカスタマーハラスメント

企業は被害を防ぐだけでなく、自社の従業員が取引先に対してカスタマーハラスメントを行わないための対策も必要です。取引先に無理な要求をしないこと、立場の弱い取引先に過大な要求を行わないことを明記します。企業間でカスタマーハラスメントが発生した可能性がある場合には、双方が協力して事実関係を確認し、適切な対応を検討します。

カスタマーハラスメント対策マニュアルは、作成するだけでなく、従業員への周知・定期的な研修・事例を踏まえた見直しまで行うことが大切です。企業の実態に合わせて具体的な判断基準や報告体制を定め、組織として対応できる体制を整えましょう。

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3. ハラスメント相談の現場から|仕組みが従業員を守る

ハラスメント相談の現場では、「どこまで我慢すればよいのか分からなかった」「上司に迷惑をかけると思い、相談できなかった」という声を耳にします。

カスタマーハラスメントが発生したとき、対応を従業員個人の経験や判断に任せてしまうと、一人で抱え込み、心身の不調につながるおそれがあります。従業員を守るために必要なのは、個人の我慢や対応力ではなく、組織として支える仕組みです。

どのような行為をカスタマーハラスメントと判断するのか、誰に報告し、どの段階で上司が対応を代わるのか、どのような場合に対応を中止するのか。こうした基準をマニュアルで明確にしておくことで、従業員は迷わず助けを求めることができます。

ただし、マニュアルを作成するだけでは十分ではありません。相談窓口を周知し、定期的な研修や事例検討を通して、実際に使える仕組みにしておくことが大切です。

「一人で対応しなくてよい」と従業員が実感できる体制は、安心して働ける職場づくりにつながります。仕組みを整えることは、従業員を守るという企業の姿勢を、具体的な形で示すことでもあるのです。

4. まとめ|マニュアルと相談窓口は「作って終わり」ではない

カスタマーハラスメント対策は、マニュアルを作成し、相談窓口を設置すれば終わりではありません。従業員が内容を理解し、いざというときに迷わず報告・相談できて、初めて機能する仕組みとなります。

そのためには、以下の3点が重要です。

  • 相談窓口の担当者や相談方法を定期的に周知する
  • 研修や事例検討を通して、判断基準や対応手順を組織全体で共有する
  • 実際に起きた事案を振り返り、マニュアルや社内体制を継続的に見直す

従業員に我慢や一人での対応を求めず、組織として守る姿勢を明確にすることが、安心して働ける職場づくりにつながります。「何から手をつければいいか分からない」という場合は、専門家への相談もぜひご検討ください。

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