パワハラのない医療現場を目指して:事例と解決策
医療現場におけるパワハラ事例とその対策

医療現場は、大切な命を支える責任のある職場であり、その特性上、指導が厳しくなったり、プレッシャーを感じる場面が多いとも言われています。ただ、そうした指導が過度になると、パワーハラスメント(パワハラ)と受け取られ、職場の雰囲気が悪化したり、従業員の離職につながることもあります。また、それが患者さんへの影響を及ぼすことも考えられます。
本記事では、医療現場での具体的なパワハラの事例を取り上げ、よりよい職場環境をつくるための解決策を紹介します。
医療現場でのパワハラとは?
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる ①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。厚生労働省のガイドラインでは、以下の6類型が定義されています。
→参照:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(暴言・侮辱)
- 人間関係からの切り離し(隔離・無視)
- 過大な要求(業務遂行困難な課題の強制)
- 過小な要求(能力や役職に見合わない業務の押し付け)
- 個の侵害(プライバシーの侵害)
医療現場での『精神的な攻撃』『過大な要求』『人間関係からの切り離し』に関するご相談をいただくことがよくあります。業務の特性上、こうした問題が発生しやすいと言われることもあり、適切な対策が求められています。
医療従事者特有のパワハラ事例
事例1:新人看護師への過度な叱責
状況
新人看護師Aさんは、業務中に患者対応のミスをしてしまいました。指導担当の先輩看護師は、「こんなこともできないの?」「看護師向いてないよ」と大勢の前で厳しく叱責しました。その結果、Aさんは萎縮し、次第にミスが増加しました。
問題点
- 大勢の前での叱責は精神的な攻撃に該当する
- 必要以上に人格を否定する発言が含まれている
- 萎縮することで学習意欲が低下し、さらなるミスにつながる
解決策
- 叱責せず、個別に冷静に解決策を指導する
- ミスの原因を一緒に分析し、建設的な改善案を提示する
- ポジティブなフィードバックを交えながら指導する
事例2:情報共有不足によるトラブル
状況:先輩看護師の指示が曖昧で、新人看護師Bさんが適切な対応ができず処置に遅れが生じました。その場で先輩看護師に「何をしているの!」「急いで!」と強い口調で叱責され、焦ったBさんはさらにミスを重ねました。
問題点
- 明確な指示がないまま急かされることで心理的ストレスが増大した
- 新人看護師Bさんが委縮し、疑問点を質問しにくくなった
- チーム内の信頼関係が損なわれ、連携が悪化した
解決策
- 怒鳴るのではなく、指示は具体的かつ明確に伝える
- 信頼関係を構築し、確認しやすい仕組みを導入する
- 情報共有体制の整備や、研修を通じた医療チーム全体のコミュニケーション改善を図る
事例3:過剰な労働時間の強制
状況
病院の人員不足により、看護師Cさんが連日残業を強いられ疲労が蓄積していました。上司から「みんなやっているから頑張るべき」と言われ、心身ともに限界を迎えていました。
問題点
- 長時間労働の強制は「過大な要求」に該当
- 心身の健康が害され、医療ミスのリスクが高まる
- 組織全体の生産性が低下し、離職率の上昇につながる
解決策
- シフト管理を見直し、労働時間の適正化を図る
- 業務量の調整を行い、無理な労働を強制しない
- 相談窓口を設置し、職員が声を上げやすい環境を整備する
医療現場におけるパワハラ事例の共通点
医療現場では、新人看護師への叱責、情報共有不足、過剰な労働時間といったパワハラ事例が懸念されることが少なくありません
パワハラを防ぐための対策
組織的な取り組み
- ハラスメント研修の実施
定期的な研修を通じて、パワハラの定義や適切な指導方法を学ぶ - 相談窓口の設置
第三者機関や専門家による窓口を設置し、被害者が安心して相談できる環境を整える - ハラスメント防止規定の整備
明確なルールを策定し、パワハラ発生時の対応を明示する
個人の意識改革
- 叱責せず、冷静に指導する
部下の成長を促す建設的な指導を心がける - 感情的にならず冷静に対応する
コミュニケーションのトレーニングを行う - 被害を受けた際は記録を残す
パワハラがあった場合、日時や内容を記録し、適切な相談先へ報告する
適切なパワハラ対策は医療の質向上の鍵
医療現場では、厳しい指導とパワハラの線引きが難しい場面もありますが、適切な対策を講じることで職場環境の改善につながり、医療の質の向上も期待できます。ハラスメント防止には、組織全体での取り組みと個人の意識改革が重要です。職員一人ひとりが安心して働ける環境を整えることで、結果として患者さんにとっても良い医療の提供につながります。
コーディアルでは、医療現場向けのハラスメント防止研修や、相談窓口設置支援を提供しています。具体的なご相談やご質問がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
医療現場におけるパワハラ防止に向けて、具体的な対策を講じ、より良い医療の提供を目指しましょう。
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